ぱのの方丈徒然草子

ガチ恋ヒヨコ群&ぱるらーの備忘録

日本最後の秘境〜吐噶喇列島訪問記〜

吐噶喇列島に行く

突然ですが、日本国内で「秘境」と言われた場合、真っ先に思いつくところはどこでしょうか?

 

往復に時間もお金もかかる小笠原?

 

船の就航率も悪く、絶海の孤島にある青ヶ島

 

はたまた、酷道と称される国道425号がある紀伊半島

 

おそらくどこも秘境であることには変わりないのですが、私が考える、日本最強の、そして、日本最後の秘境とも言えるのが、鹿児島県にある「吐噶喇列島」(トカラ列島)と呼ばれる島々です。

 

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▲場所は大体この辺り。

 

鹿児島県といえば、種子島屋久島、奄美大島など、大小様々な自然に富んだ島々がたくさんありますが、吐噶喇列島はその中でも、屋久島と奄美大島の間、東シナ海に、ポツポツと点在している小さな諸島です。

 

吐噶喇列島には有人島が7つありますが、最も人口の多い中之島でも、たったの170人しかおらず、二桁台しかいない島もたくさんあります。

都内では、マンション一棟分にも満たない居住者しかいないわけです。

 

そんな吐噶喇列島ではありますが、地域の重要なインフラとして、各有人島に郵便局がしっかりと設置されております。

日本郵便のインフラ性にはつくづく脱帽します。

 

しかし、当然ながらそんな環境ですので、船便の本数は相当限られてきます。

 

吐噶喇列島へのアクセスは、船をチャーターする以外には、鹿児島港〜名瀬港(奄美大島)を、約16時間かけて結ぶ、フェリーとしまという大型船に限られます。

 

この船は、鹿児島港を深夜に出て、各島を10分の滞泊で周り、名瀬に翌日の15時過ぎに着き、そのまま一晩滞泊し、次の日の夜2時に出港して鹿児島を目指すという体制で、つまるところ、週に2便しか運航されないことになります。

 

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▲フェリーとしまのダイヤ

 

したがって、全部の有人島を、この定期航路のみを使って回ろうとすると、2週間程度かかることになります。

社会人であれば週休は2日しかありませんし、学生は時間があるといえども、そんなに安くもない船に乗ってチンタラ回っているのは、さすがにお金が足りません。

 

吐噶喇列島の郵便局を回ることは、簡単なことではないのです。

 

 

しかし!!

 

 

1年に1度だけ、チャンスがあるのです!!

 

 

それが、「レントゲン船」という特別ダイヤで運航される日です。

 

前述の通り、吐噶喇列島は人口が少ないため、診療所こそあれど、たとえば分娩や手術など、高度医療を行えるような病院はありません。また、いわゆる健康診断を行えるような病院もありません。

 

ですが、島に住んでいる方々の病気を早期に発見し、検診する必要がありますので、お医者さんがフェリーに乗り込み、2泊3日で各島を周り、住民たちの健康診断を行って、名瀬に向かうダイヤで運航する日があるのです。

 

普段は各島10分しか止まりませんが、いくら人口が100人足らずの島とはいえ、さすがに10分で健診を行うのは短すぎますから、だいたい、1〜2時間程度止まって、住民の診察を行っていきます。その間、一般の乗客は途中下船を行うことができ、島を自由に散策することができるのです。つまり、郵便局に行くことも可能というわけです!

 

しかし、このレントゲン船特別ダイヤに乗るためには、とんでもない難関が待ち受けています。

 

 

フェリーとしまには、一等船室と二等船室がありますが、当日の一等船室は、お医者さんや役場関係者、電力関係者などのために埋まっていて、一般の人は二等に乗るほかありません。

それに加えて、郵便局マニアや温泉好き、秘境好き、離島カード収集家など、さまざまなマニアが、この年に一度のチャンスを逃さないと、必死に乗船する機会を窺っています。

簡単に言うと、倍率めっちゃ高けぇ!ってことです。

 

ひとりで電話しても繋がらず、やっと繋がっても予約が埋まってた、なんてこともあり、何年か電話をかけてやっと乗れたなんていう人もいるくらいです。

 

確実に乗りたいのであれば、電話をかける母数を増やす、つまりは友達の力を借りて、回数をこなすしかないわけです。

 

乗船予約はひと月前の8:30より、電話のみで受け付けます。

 

当日は、大学の頃の友人と手分けをして、とりあえず電話をかけまくりましたが、

 

全然繋がらん!!!

 

 

何回もリダイヤルして、トライして、9:00過ぎくらいに、何と友人がチケットの確保に成功!

 

 

5月15日、19時過ぎくらいに、鹿児島で落ち合うことを約束し、

まだ見ぬ秘境を訪れる興奮を隠しながら、その日が来るのを待っていました。

 

 

いよいよ吐噶喇列島へ

 

5月15日、仕事を終えて向かった先は鹿児島港。

 

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「フェリーとしま」の出港は23時ですが、乗船券は、出港日の21時までに引き換える必要があります。

そのため、早めに窓口に並んで、一度乗船手続きを済ませてから、晩ごはんを食べることにしました。

 

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港から徒歩3分のところにある、回転寿司「めっけもん」にて。タカエビが特にプリップリで、トビッコもつぶつぶでめっちゃ美味しかったです。この鮮度のものは、東京では食べられません。

 

 

そのあとは、これからお世話になる「十島村」の役場を表敬訪問。

 

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十島村役場は、吐噶喇列島のどこかの島にあるわけではなく、鹿児島市内の、フェリー乗り場の近くにあります。

 

表敬訪問したはいいものの、街灯りが少なく、いまいちいい写真は撮れず。

 

市町村役場が所在地にない例としては、同じく鹿児島県の三島村役場(鹿児島市にある)や、沖縄県竹富町役場(石垣市内にある)が挙げられます。

 

 

ボチボチいい時間になったので、再びフェリーターミナルに移動し、改札を受けて、いよいよフェリーの中へ!

 

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吐噶喇列島にはヘリポートこそありますが、大きな飛行機が発着できる空港はありませんので、生活物資もすべてこの船に積載して運んでいます。

 

岸壁に積まれていたコンテナを、クレーンを用いて甲板に乗せていくその情景は、まさに島の生命線である、フェリーとしまの頼もしい姿を引き立たせてくれます。

 

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▲鹿児島⇆十島⇆名瀬のサボ?表示?が目立つフェリーとしま
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23時、ランプとタラップが外されて、いよいよ離岸!鹿児島港を定刻通り出港しました。

 

 

日本最強、最後の秘境と称される吐噶喇列島への旅が、今、始まろうとしています。

 

どんな郵便局が待っているのか。果たして無事に奄美へ辿り着けるのか。

 

期待と不安に胸を躍らせながら、船は最初の島「口之島」目指してゆっくりと鹿児島湾を進んでいきます。

 

 

つづく