日本最後の秘境〜吐噶喇列島訪問記②〜
前回の内容
日本各地から屈指の旅マニアが集うとされる、年に一度のイベント「吐噶喇列島レントゲン船」
友人の尽力を得て、座席の争奪戦に勝利した私は、
郵便局の貯金通帳を携えて、日本最強かつ最後の秘境、吐噶喇列島への訪問を決めた。
果たして、そこで私が見た光景とは…
いよいよ最初の島へ!
5月15日 23時
定刻通りに鹿児島港を出港した「フェリーとしま」のレントゲン船
外洋を進むことおよそ6時間、最初の島「口之島」に到着しました。
口之島
面積13.25㎢
人口103人
早朝5時でありながら、すでに岸壁には健康診断を待っている島民の方が!
さて、この口之島ですが、残念ながら早朝入港〜早朝出港のため、郵便局窓口は当然空いておらず、貯金をすることは出来ません。
「未訪問の郵便局は原則として写真を撮影しない」というマイルールを課しているので、集落には行かず、北緯30度線モニュメントまで往復することに。
▲港通りから眺めたフェリーとしま@口之島
港から歩くことおよそ15分、少々のアップダウンはありましたが、北緯30度線に到達!
何の変哲もないただの緯度線に見えますが、実はこの北緯30度線、歴史的に非常に重要な役割を果たしてきました。
1945年、日本が太平洋戦争に敗戦後、琉球(沖縄)と奄美群島の施政権がアメリカに移されたのは有名ですが、実はこの口之島を含む吐噶喇列島も、アメリカの施政権下に置かれていました。
その際に基準となったのが、この北緯30度線なのです。
つまり、戦後すぐから暫くの間は、この口之島が「国境の島」であり、この線を超えて、日本国内と自由な交易を行うことはできなかったわけです。
とはいえ、実際には警備の目を掻い潜り、ポンポン船という小型船を使いながら、密交易は続けられたといいます。
そしてこの口之島には、日本ではかなり珍しい、在来牛(外国の血統が混じっていない、純粋な国内牛)である、口之島牛が生息しています。
レントゲン船は、この口之島に1時間ちょっと滞泊しますが、途中下船の人は、出港15分前に船に戻り、「一時下船名簿」にチェックを入れる必要があります。
そのため、実際に島内を散策できる時間は意外と限られており、足が徒歩しかなかったこともあって、港からモニュメントまで往復しているだけで、もうリミットの時間が迫っていました。
吐噶喇列島には郵便局を始め、豊かな自然や温泉が多々ありますが、正直、たった1、2時間の滞泊では全く時間が足りません(泣
まあ、主たる目的は島民の健康診断ですので、仕方ないんですけどね。
島内をゆっくり散策したい方向けに、「島めぐりツアー」なる特別ダイヤが組まれることもありますが、
運航が休日メインのため、郵便局の窓口は閉まっています。
郵便局に行って貯金や日附印を押してもらうためには、やはりこのレントゲン船に乗るしか手はないのです。
今回、乗船していた郵便局マニアの方はざっと8人くらいでしたでしょうか。乗れなかった人も含めればもっといたはず。
「郵便局めぐりツアー船」とかやれば、それなりに人は集まりそうですけど、、、
さて、本論から逸れてしまいましたが、特に大きなトラブルもなく、定刻よりやや遅れて、船は次の「中之島」を目指します。
中之島〜郵便局スタートダッシュ〜
▲フェリーとしまから眺めた中之島の外観
面積 34.47㎢
人口 171人
この中之島は、面積および人口どちらも吐噶喇列島最大の島です。
中心に聳え立つのは最高峰の御岳(標高979m)。いかにも火山島といった佇まいで、非常にカッコいい島ですね。
この中之島には、港から徒歩15分ほどのところに、温泉が2箇所あります。
今回は、海岸線沿いにある「東区温泉」に入浴。
ほったて小屋のような外観ですが、泉質は良く、硫黄や明礬を含み、神経痛や冷え性への効能があるとのことです。
源泉の湯温は非常に高いのですが、加水されているため入りやすい温度に調整されています。
▲中之島郵便局。2007年までは集配。営業時間はほかの郵便局と同じく9:00-17:00(貯金は16時まで)だが、ATMはない。
このあとは、お目当ての中之島郵便局にて貯金、といきたいところなのですが、ひとつ問題が。
中之島の出港時刻は9:10、先ほども述べた通り、出港15分前には乗船している必要がありますので、実質的なタイムリミットは8:55までとなります。
郵便局の窓口は9時からしか空いていませんので、旅行貯金をするには、かなりギリギリ(というか間に合わない)のスケジュールを組まざるを得ません。
船の係員さんに許可を得て、ギリギリになる旨を伝えたとしても、港から郵便局までは走って10分以内に着けるかどうかといったところ。
しかも自分はデブの鈍足なので、走るという行為は全く向いていない…
苦渋の決断でしたが、私の我儘で船を遅らせることはできないので、ここは自力での入金を諦め、自転車を積んでいたフォロワーにお願いして、先に船に戻って出港を待つことに。
結果としてはギリギリになってしまいましたが、何とか入金はできました。本当にありがとうございました。
せめて9:30にでも出港してくれれば非常にゆとりがあるのですが、郵便局めぐりをするために考えられているダイヤではないので、まあ仕方ないですね。
諏訪之瀬島〜火山灰との戦い〜
吐噶喇列島の島は基本的に火山島であり、今でも地震速報などで頻繁に名前を聞くほど、地殻活動が活発に起きている地域であります。まあ、それゆえに、温泉という最大の娯楽を享受できているわけですが…
次に上陸する諏訪之瀬島(すわのせじま)にある御岳も同様に、これまで幾度となく噴火を繰り返し、ここ数年の間にも5、6回の大規模な噴火が起きています。
面積27.6㎢
人口79人
しかもこの諏訪之瀬島、急峻な山の上にある集落に郵便局が存在しているため、船の停泊時間中に、そこまで行って帰ってくる必要があります。
理屈の上では十分に間に合う計算なのですが、ジリジリと照りつける南国の太陽と、行手を阻む急な坂道が、容赦なく邪魔をしてきます。
さらに、風向きの関係で、身体に火山灰が襲いかかってきます!
息を吸うたびに入り込んでくる灰、照りつける太陽、そして迫る船の時間…
やっとの思いで到達したのが、ここ!
2018年4月25日に開局した、非常に新しい簡易郵便局です。
ここができるまで、島内に郵便局はありませんでした。住民の皆様は、郵便や貯金のためだけにわざわざ船に乗って中之島郵便局を使わざるを得ず、非常に不便だったと言います。
周辺にはコミュニティセンターやへき地診療所(!)があり、集落の中心もこの辺りにあります。
▲諏訪之瀬島へき地診療所(上)と、集落の街並み
ここでは何のトラブルもなく、無事にゴム印を頂くことができ、感無量でございました。
うーん、でももうちょっと時間が欲しい。
あと10分、いや15分でいいから。
ここまできてこんなにワチャワチャするのはどうなのかな?とか考えつつ、船内でお会いした郵便局めぐり大好きな方と他愛のない話をしながら、港へ戻ることに。
帰り道はほぼ下り坂ですので、体力を消耗することなく、ひたすら坂道を下りて港へ。
なんとか出港20分前に到着し、乗船名簿にサイン。
我々が到着したときには、すでに健康診断は終わっておりました。意外とすんなり終わるもんなんですね。
大きな汽笛を鳴らしながら、フェリーとしまは次の島、平島(たいらじま)を目指します。
南国真夏の太陽光は、運動不足の私に全く容赦しませんでした。
迫り来る急坂、奪われる体力、そしてかなりの寝不足。
果たして無事に、この旅行を完遂することはできるのか!?
そして、平島への道中で、事件は起きたのだった。
次のブログへ続く。